休日の過ごし方
しばらくテレビをただ眺めていると、寝ていたはずの刹那がいきなりすっと立ち上がった。
何なのかと思い見ていると、そのまま机に向かい空になったマグカップを手に取りキッチンへと歩いていった。
-warmth-
右肩の重みがなくなり、すぐ近くにいるというのにどこか切なさのようなものを感じるのは何故なのか。
「せーつーなーくーん」
「ちょっと待って。すぐ終わる。」
そんな気持ちを隠そうと悪戯っぽく呼び掛けた言葉を続けさせてはくれなかった。
さっきまで隣りにあった温もりが次第になくなっていくのを肌で感じ、心までが寒くなる。
まだキッチンにいる刹那のもとへ行き、温もりを求めて後ろから抱き締める。
「なに……?」
刹那は俺のほうも見ず、ただ問い掛けてきた。
俺が刹那に温めて欲しいのは体だけじゃなくて
「俺のこと好き?」
問い掛ければすぐ近くにある刹那の耳が真っ赤に変わった。
しばらくして、わずかにこくんと頷く。
「じゃあ、好きって言って欲しいなぁー」
意地悪な要求だとわかっていながら、言葉が口をついて出た。
刹那の耳は更に赤くなる。
顔までは見えないが、多分耳と同じ色をしていることだろう。
しばらくするとゆっくりと刹那の手が伸びてきて、俺の腕をぎゅっと握った。
顔は伏せられ、ふるふるとわずかに震えているのが伝わってくる。
好きだなんて言葉聞かなくとも、これだけで刹那の気持ちは充分伝わってくる。
「ごめんな、刹那。
大丈夫、ちゃんとわかってるから…」
刹那の気持ちを確認し、俺は腕をほどきソファーに戻ろうと足を出した。
突如、ハシッと右手を掴まれ、振り返ると想像どおり、顔を真っ赤にした刹那がいた。
「どうした?」
やはりさっきのは意地悪しすぎたか。
まだ奮えは止まっておらず、ポンポンと頭を撫でてやる。
「………だから」
俯いたまま、刹那が消え入りそうな声で何か喋る。
「ん?なに?」
「ちゃんと…す、きだから、な…ッ!」
潤んだ瞳をこちらに向け、いつもの倍はあるのではないかと思える声で言われた。
一瞬、何が起こったのか理解がおいつかず、俺は固まってしまう。
フィと俯き、このまま壊れてしまうのではないかと思える刹那を見てやっと状況を理解した。
−これは反則だろ
嬉しさが一気に込み上げてきて、目の前にいる恋人を抱きしめずにはいられなかった。
「…ありがと、刹那。」
心はまるで、日だまりの中にいるようだった。
-warmth- END
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